Sonai Iriomote island – 祖納 西表島

Posted by on 11月 13, 2013 in Travel, 沖縄離島 | No Comments

Trip date : 2013.09.30-10.01

もう一つのお正月

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西表島の祖納、干立、そして船浮では、毎年旧暦の10月前後の己亥(つちのとい)に、その年の五穀豊穣を祈願する『節祭(シチサイ)』という祭りが三日間行われる。
初日は大晦日、そして二日目に新年を迎える。

新暦の正月とも違う、旧暦の正月とも違う、もう一つのお正月といったところだろうか。
学校はもちろん休みになるし、老若男女、集落全員が参加する。
タイの水掛け祭りのように、国や地域特有のお正月って、歴史あるもので凄く重んじられるし、地域をあげてのお祭りだから、絶対おもしろいはず!
そう確信して、西表島に向かった。

誰もいない・・

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今回は祖納の節祭りを見学させてもらう事にした。
石垣島の離島桟橋から船で西表島の上原港へ。
そこからバスに乗って祖納へ向かう。
日本中?世界中?から節祭を見に人が集まってくるから、この時期はなかなか宿が取り辛い。
やっと取れた宿は、他に誰も客が居ない小さな民宿。
よく言えばアットホーム。
それはそれでよし。
昼過ぎに石垣を出発してから、祖納の宿に落ち着いた頃には夕方になっていた。
旅先では環境を把握する為にも散歩をするのが好きで、この日も荷物を置いてからとりあえず散歩に出かけた。
人が一人もいなくて、遭遇したのは山羊とウズラのみ。
のどかだな〜と思いながら歩いていると、何やら賑やかな場所に行き着いた。
どこにも人がいないな〜と思っていたんだよ、なるほど、村中の人がここに集まってたんだね。
何の集まりかと思って覗いてみたら、そこは祖納公民館で、翌日の節祭メインイベントのリハーサルを行っていた。

ドキッとしちゃった♡

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様々な演目があって、おじさん達、お兄さん達、お母さん達、子供達、みんなそれぞれのパートを一生懸命練習していた。
一番ドキッとしたのは、素顔で私服姿のミルク様。
ミルク様を演じる事ができるのは、その年49歳の男性だそうで、複数名いる場合は一番早く生まれた49歳の方。
逆に一人もいない場合はとなりの村から連れてくるそうだ。
ミルク様を演じるというのはとても名誉な事。そりゃそうだよね、一瞬にして神様になっちゃうんだから。
お祭りが行われている間は一日中飲まず食わず、おまけに用を足す事もできない。
神様になるというのは並大抵の事ではない。
それだけに、素顔のミルク様を見るのは、つい目を逸らしてしまうような、ちょっぴり恥ずかしい気持ちになる。
「ミルク様リハーサル中の彼はそんな翌日の心配をしているだろうか」そんな事を一人で妄想しながら見学させてもらった。
西表島、節祭、大晦日の夜。

正月なのに、食べ物が無い?!

そして迎えた翌日、夜が明ける前に「ユークイ吉日」を知らせる一番ドラがなる。
お天気にも恵まれ、最高のお祭り日和だ。
長い一日に備えてしっかり朝食を食べようと出かけたら、食堂が開いてない!
どこもかしこも開いてない!
聞いたら、節祭の時はみんな儀式の準備で忙しくて、営業しないのだとか。
聞いてなかった・・・
食べ物が無い事ほど不安な事はない。
一瞬世の終わりかと思ったが、幸いスーパーが開いていて、そこで食料を調達。
一日食べられない事を考えて、お腹がはち切れるほど詰め込んだ。

ユークイ(世乞い)ショーニチ(正日)

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お腹が満たされたところで、いよいよ出動。
朝早くから公民館で準備が行われるという事で、そこから参加した。
昨夜のリハーサルに引き続き、お目当てはやはりミルク様。
舞台上でミルク様に変身する儀式を一部始終を見学させて頂いたが、とても感動的だった。
一瞬で神様に変身した彼は、外見だけでなく、本当に神様が乗り移ったように見えた。
もうそこに49歳の彼の姿はなく、そこにいるのは紛れも無く立派なミルク様だった。

衝撃の黒装束

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ヤフヌティ(櫂の手)を筆頭に、御一行様が次々と公民館を出発し集落内を練り歩き、前泊海岸を目指す。
ミルク様の次に私の目を奪ったのは、アンガー行列の先頭を歩く、黒装束のフダチミ。
顔を見られないように黒い布で全身を覆った姿は、若干不気味でもあり、ゲゲゲの鬼太郎の世界に迷い込んだような、不思議な感覚に駆られた。
ミルク様が見守る中、浜辺で繰り広げられる棒術や踊りなどの芸は見応え満点。
また、節祭のメインイベントでもあるフニクイヌ(船漕ぎ)は、いわゆるハーリー競争だが、沖縄で色んなハーリー競争がある中、ここが距離として最長だと言われている。
最後には獅子舞も登場して、賑やかに終了。

ミルク様お疲れ様

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ミルク様が49歳の彼に戻る瞬間をどうしても見たくて、また御一行様と共に公民館へ戻った。
ミルク様お付きのおじさんがいて、まるで魂を吹き込むかのように、慣れた手つきで一瞬で変身させてくれる。
変身の儀式はきっと何度見てもドキドキするんだろうなぁ。
今回、前日のリハーサルから本番当日まで、ずっと見学させてもらって感じたのは、とにかく大人も子供も、みんな真剣で本気だったこと。
小さな集落のお祭りかもしれないが、そこには文化や歴史がしっかり根付いていて、今なおしっかりと継承されている事に感動した。
とても素晴らしい体験ができた事に感謝します。
ありがとう、祖納。
今度機会があったら、干立のオホホ様にも会いに行こう。